「ファンドレイジングじゃなくって、フレンドレイジング！これが成功の秘訣よね。」
University Hospital のクロノウィスキ女史は、彼女の担当するCircle of Friendsのプログラムについて一気にまくしたてると、一息ついてから、自身たっぷりにそう言い放ちました。
University Hospital(以下、UHと書きます）は、医療の町、クリーブランドの2枚看板病院のひとつで、小児病院としては、全米第三位、新生児医療としては、全米一位の称号を受けている大病院です。しかし、もうひとつの看板のクリーブランドクリニックが最先端高度医療に特化して、いまひとつ地元コミュニティの医療ニーズに応えていないという批判のある中、UHは、地元住民へのきめ細かいケアがいきとどいているという評判です。
そして、その評価を支えているのが、第一にボランティアのサポート、第二に地元コミュニティからの絶え間ない寄付にあります。
1000人のボランティアを管理するシステム
まず、ボランティアについて見て見ましょう。UHには、常時、活動中のボランティアがなんと1000人以上います。日本の感覚からして、大病院にボランティアがいると聞いただけで、ちょっと驚きますが、これが1000人いるとなると、ちょっと．．．想像の域を超えてしまいます。アメリカの病院には本当によくボランティアが働いていて、例えば、新生児をだっこするボランティアとか、データの入力とか、患者さんの案内とか、手術前の患者さんに話しかけてリラックスさせる役のひととか、とにかくたくさんいます。一応、皆さん、身分証明書の色が変えてあるので、誰がボランティアで誰が医者かとかは分かるようになっています。
どうしてこんなにボランティアがいるのでしょうか。これは、歴史的にみると、アメリカで「病院」というのは、そもそも貧困者向けのサービスであったという伝統とは無縁でないと思います。昔は、金持ちは、家に医者をよぶのが常で、だれも病院には行かなかったわけです。なので、地域社会向けの福祉サービス的な伝統が未だに病院に残っているという人もいます。日本では、医療法人といっても、院長さんがオーナー社長みたいな感じで、とくに「地域社会への貢献」を組織として求められるという印象はないですよね。
さて、前置きが長くなりました。ここでの本論は、ボランティアの管理です。1000人のボランティアを、人命をあずかる大切な病院で管理するわけですから、いったいどうやってるんだろう。これは、前から興味がありました。しかも、UHのボランティアは満足度が高いと聞いていました。私の経験から、30人こえたら、普通、誰と最近どんな会話をしたかも覚えきらないのに、1000人を満足させるシステムとは何だろう。そこで、ボランティアセクションの責任者にインタビューをしにいったというわけです。
システムが温かみのある人間関係を生み出す。
UHでは、コンサルタントを使って、ボランティア管理データベースと管理マニュアルを作っていました。これがなかなかの優れもので、大変感銘を受けました。
詳しく説明すると長くなるので、UHにおけるボランティア管理のポイントだけお伝えしようと思います。
◆全ボランティアのデータの入ったデータベース。
?全ボランティアがボランティア開始時と終了時に端末で入力。
?ボランティアへのメッセージは、同端末を通じてやりとり。
?過去のボランティア実績、寄付実績、本人の関心、ボランティア頻度等がﾃﾞｰﾀﾍﾞｰｽ化
◆受け入れ側、ボランティア側、双方へのオリエンテーション、ブリーフィングセッションの体系化。
◆一定期間（3週間目、半年目）ごとに、ボランティアと受け入れ側の双方に評価表を記入させ、期待との違いや満足度を判定。
◆ランチョン・アワード（昼食会で、1000時間ボランティアした人を表彰する。）等の感謝イベントの定期的開催。
実際、驚いたのは、ボランティアセクションのスタッフは、Directorのほかには、秘書さんと、若いスタッフくらいで、ほとんどスタッフがいなかったことです。これで、1000人のボランティアを満足させているとすれば、大したシステムだなと感じました。
結局、人間は、温かみのある関係を求めています。特に、ボランティアをやる人はそうだと思います。UHの成功は、受け入れ側の温かみのある対応を、システムで引き出しているという点にあると思います。
どういうことでしょうか。もし、十分な受け入れ側の訓練体制がなく、ボランティア管理のためのコンピューターのデータベースもなく、評価システムもはっきりしなかったとします。台帳や属人的にボランティアを管理するとしましょう。その場合、各部署が「柔軟に」対応できるというのが、すぐ思いつくメリットです。しかし、実際のところ、その部署のお医者さんや、看護婦さんは、まず、そのボランティアに色々オリエンテーションをしなければいけません。毎日のボランティア時間をノートに記録しなければなりません。ボランティアが何か不満に思っているとすれば、それとなく聞き出して見ようとか、色々気をつかわなければなりません。そうしたことが、当然、受け入れ部署の方々は面倒になってきます。そういう気持ちは、すぐに顔に現れてしまいます。中には、横柄な看護婦さんがいて、ボランティアの気分を繰り返し繰り返し悪くさせているかもしれません。
しかし、実際に色々気を使っても、中々人間、面と向かって文句は言いにくいものですので、ボランティアの中にはウチに溜めて、不満をつのらせているかもしれません。そうして、ボランティアがストレスを感じて離れていくと、それがそのまま、病院のネガティブな評判につながっていくのです。
一見、こうしたマニュアル化、データベース化というのは、「人間味のあるボランティア管理」には逆行しているように見えるかもしれません。しかし、そうした実務的な部分をいかに効率的なシステムにして、処理してしまい、いかにプラスアルファの人間味を乗せていくかが、大きな団体で長続きするボランティア管理の根本なのかもしれません。
University Hospital のクロノウィスキ女史は、彼女の担当するCircle of Friendsのプログラムについて一気にまくしたてると、一息ついてから、自身たっぷりにそう言い放ちました。
University Hospital(以下、UHと書きます）は、医療の町、クリーブランドの2枚看板病院のひとつで、小児病院としては、全米第三位、新生児医療としては、全米一位の称号を受けている大病院です。しかし、もうひとつの看板のクリーブランドクリニックが最先端高度医療に特化して、いまひとつ地元コミュニティの医療ニーズに応えていないという批判のある中、UHは、地元住民へのきめ細かいケアがいきとどいているという評判です。
そして、その評価を支えているのが、第一にボランティアのサポート、第二に地元コミュニティからの絶え間ない寄付にあります。
1000人のボランティアを管理するシステム
まず、ボランティアについて見て見ましょう。UHには、常時、活動中のボランティアがなんと1000人以上います。日本の感覚からして、大病院にボランティアがいると聞いただけで、ちょっと驚きますが、これが1000人いるとなると、ちょっと．．．想像の域を超えてしまいます。アメリカの病院には本当によくボランティアが働いていて、例えば、新生児をだっこするボランティアとか、データの入力とか、患者さんの案内とか、手術前の患者さんに話しかけてリラックスさせる役のひととか、とにかくたくさんいます。一応、皆さん、身分証明書の色が変えてあるので、誰がボランティアで誰が医者かとかは分かるようになっています。
どうしてこんなにボランティアがいるのでしょうか。これは、歴史的にみると、アメリカで「病院」というのは、そもそも貧困者向けのサービスであったという伝統とは無縁でないと思います。昔は、金持ちは、家に医者をよぶのが常で、だれも病院には行かなかったわけです。なので、地域社会向けの福祉サービス的な伝統が未だに病院に残っているという人もいます。日本では、医療法人といっても、院長さんがオーナー社長みたいな感じで、とくに「地域社会への貢献」を組織として求められるという印象はないですよね。
さて、前置きが長くなりました。ここでの本論は、ボランティアの管理です。1000人のボランティアを、人命をあずかる大切な病院で管理するわけですから、いったいどうやってるんだろう。これは、前から興味がありました。しかも、UHのボランティアは満足度が高いと聞いていました。私の経験から、30人こえたら、普通、誰と最近どんな会話をしたかも覚えきらないのに、1000人を満足させるシステムとは何だろう。そこで、ボランティアセクションの責任者にインタビューをしにいったというわけです。
システムが温かみのある人間関係を生み出す。
UHでは、コンサルタントを使って、ボランティア管理データベースと管理マニュアルを作っていました。これがなかなかの優れもので、大変感銘を受けました。
詳しく説明すると長くなるので、UHにおけるボランティア管理のポイントだけお伝えしようと思います。
◆全ボランティアのデータの入ったデータベース。
?全ボランティアがボランティア開始時と終了時に端末で入力。
?ボランティアへのメッセージは、同端末を通じてやりとり。
?過去のボランティア実績、寄付実績、本人の関心、ボランティア頻度等がﾃﾞｰﾀﾍﾞｰｽ化
◆受け入れ側、ボランティア側、双方へのオリエンテーション、ブリーフィングセッションの体系化。
◆一定期間（3週間目、半年目）ごとに、ボランティアと受け入れ側の双方に評価表を記入させ、期待との違いや満足度を判定。
◆ランチョン・アワード（昼食会で、1000時間ボランティアした人を表彰する。）等の感謝イベントの定期的開催。
実際、驚いたのは、ボランティアセクションのスタッフは、Directorのほかには、秘書さんと、若いスタッフくらいで、ほとんどスタッフがいなかったことです。これで、1000人のボランティアを満足させているとすれば、大したシステムだなと感じました。
結局、人間は、温かみのある関係を求めています。特に、ボランティアをやる人はそうだと思います。UHの成功は、受け入れ側の温かみのある対応を、システムで引き出しているという点にあると思います。
どういうことでしょうか。もし、十分な受け入れ側の訓練体制がなく、ボランティア管理のためのコンピューターのデータベースもなく、評価システムもはっきりしなかったとします。台帳や属人的にボランティアを管理するとしましょう。その場合、各部署が「柔軟に」対応できるというのが、すぐ思いつくメリットです。しかし、実際のところ、その部署のお医者さんや、看護婦さんは、まず、そのボランティアに色々オリエンテーションをしなければいけません。毎日のボランティア時間をノートに記録しなければなりません。ボランティアが何か不満に思っているとすれば、それとなく聞き出して見ようとか、色々気をつかわなければなりません。そうしたことが、当然、受け入れ部署の方々は面倒になってきます。そういう気持ちは、すぐに顔に現れてしまいます。中には、横柄な看護婦さんがいて、ボランティアの気分を繰り返し繰り返し悪くさせているかもしれません。
しかし、実際に色々気を使っても、中々人間、面と向かって文句は言いにくいものですので、ボランティアの中にはウチに溜めて、不満をつのらせているかもしれません。そうして、ボランティアがストレスを感じて離れていくと、それがそのまま、病院のネガティブな評判につながっていくのです。
一見、こうしたマニュアル化、データベース化というのは、「人間味のあるボランティア管理」には逆行しているように見えるかもしれません。しかし、そうした実務的な部分をいかに効率的なシステムにして、処理してしまい、いかにプラスアルファの人間味を乗せていくかが、大きな団体で長続きするボランティア管理の根本なのかもしれません。
