今日は、シーズ＝市民活動を支える制度をつくる会（Ｃ’ｓ）主催のシンポジウム「寄附者志向のＮＰＯを目指して」に参加してきました。
２時間のセッションでしたが、ＮＰＯ法人 会計税務ネットワークの赤塚和俊理事長、ＮＰＯ法人 ケア・センターやわらぎ代表理事の石川治江さん、大阪ボランティア協会の早瀬昇事務局長、東芝の社会貢献室長の日比野亨氏、そしてシーズのプログラムディレクターの轟木洋子さんがパネラーとなり、「寄附者志向のＮＰＯ」というテーマで語り合いました。
このシンポジウム、パネラーの発言がそれぞれ、熱が入っていて面白かったんですが、私なりの「気づき」で皆さんと共有したいと感じたことをまとめます。
ＮＰＯは寄附を集めないといけないか。
経済企画庁の調査によると、特定非営利活動法人の３８．９％は「寄附と特に募集していない」と答えているそうですね。この数字の見方は２つあると思います。第一に、「寄附集めを怠っているＮＰＯが多い」という見方。つまり、日本でだって、ＮＰＯがもっと頑張ればもっとお金を集められるという可能性に期待させる数字として評価する見方です。第二は、「寄附を集めなくたってＮＰＯはやっていける」という見方。日本社会で寄附を集めても、手間ばっかりかかって集まるお金が少ない。だったら事業収入や助成をメインで考えてもいいじゃないかという見方です。
今日のシンポで、ＮＰＯ法人 ケア・センターやわらぎの石川代表理事の話を聞いていて、彼女の「寄附を集めるエネルギーと労力、その他もろもろを考えると、一生懸命文書をつくって市長などにアプローチして資金を得るということでもいいのでは」という発言に私も考えさせられました。
ここで、「本来○○すべき」という哲学論争はちょっと脇においておきます。純粋にＮＰＯ経営的に見て、「寄附」が無くてやれるＮＰＯがあるなら、それでもいいのではないかということについて考察します。
株式会社は何故上場するのか
ちょっと寄り道して、民間企業の資金調達について考えて見ます。今や１円でも株式会社を作れるようになりました。何か、事業をやりたいと思えば、スグに株式会社を作ることはできます。株主は自分ひとりか、せいぜい身内など数名で始めるケースが多いようです。最初から上場して一般の株主から資金調達を考える人はいませんし、実際問題として不可能です。
しかし、こうした「個人事業」的な株式会社ですが、経営合理性の観点からは、「市場で株主を募る」株式会社よりメリットもあります。
そうです、株式を公開して、一般株主を抱えてしまうと、資金は調達できますが、反面、株主総会での説明責任や、各種問い合わせへの対応、株券の発行事務が発生してしまいます。なにより、株主による経営チェック（時には口出し）が入りますので、経営者としては、手かせ足かせがはまるような感じがすることもあります。
特に事業の立ち上げ時期に、売り上げも安定しないなかで、そんな手間な管理業務に時間と労力を割いていたのでは、何時までたっても事業が軌道に乗らないですよね。
ここで、やはり公開するかしないかのポイントは、第一に、経営自体の余力・安定性（軌道に既に乗っているか）であり、第二に、資金調達効果（上場しているという社会的信用効果も含みます）と手間との兼ね合いであるといえます。
最近、あえて上場企業が自社株を買い戻して、上場廃止にしてしまうケースも散見されます。結局はメリットがないと上場している意味も無いですよね。
さて、本論のＮＰＯ経営と寄附集めです。
寄附者は、議決権を持つ「会員」とは違いますので、ＮＰＯが寄附集めを始めたからといって、いきなり寄附者がＮＰＯ経営を左右する権限は法的にはありません。しかし、社会通念上、寄附した人がいろいろ聞いてきたら、きちんと答えないといけませんし、それなりのフォローは必要です。ある意味、キャピタルゲインだけを狙っている株主よりも、よっぽど手のかかる相手です。
他方で、寄附集めを積極的に行う費用対効果はどうでしょうか？
実際に、日本の一世帯あたりの年間寄附額が３千５百円を切っており、アメリカの一人当たり２０万円弱と大きな乖離があるように、一生懸命寄附集めしても、多くが千円とか２千円とかの寄附であれば、管理コストの方がかかってしまうと考えるのも無理はないなと思います。日本では、やはり小口寄附が非常に多い。しかし、その割には、たとえ１０００円しか出していなくても、ＮＰＯの活動に色々意見をいいたくなる方は多いですので、結構やっかいな問題です。
アメリカで寄附集めに携っていたとき、やはり感じたのは、寄附のロットがでかいということ。もちろん小口もありますが、金持ちの方とかが、「共感」すると、ボンと１万ドル（百万円）くらい出てくることは普通な感じでしたし、逆に小口寄附する人も、「このくらいの小口寄附でＮＰＯの管理コスト負担をふやしちゃな・・」というような、大人な感じの「慎み深さ」を感じることがありました。
事業系ＮＰＯ（事業収入がメインのＮＰＯ）にとって、寄附集めの費用対効果感がでる「損益分岐点」を考えると、社会全体の寄附単価のインフレ化が前提として必要なことかもしれません。しかし、現状で考えると、事業系ＮＰＯにとって、寄附集めを積極的に行う「費用対効果感」は低いということはあるんでしょうね。
ちょっと長くなりましたので、とりあえずこのへんで。このテーマ、ちょっと個人的に面白いので、もう少し考察します。
２時間のセッションでしたが、ＮＰＯ法人 会計税務ネットワークの赤塚和俊理事長、ＮＰＯ法人 ケア・センターやわらぎ代表理事の石川治江さん、大阪ボランティア協会の早瀬昇事務局長、東芝の社会貢献室長の日比野亨氏、そしてシーズのプログラムディレクターの轟木洋子さんがパネラーとなり、「寄附者志向のＮＰＯ」というテーマで語り合いました。
このシンポジウム、パネラーの発言がそれぞれ、熱が入っていて面白かったんですが、私なりの「気づき」で皆さんと共有したいと感じたことをまとめます。
ＮＰＯは寄附を集めないといけないか。
経済企画庁の調査によると、特定非営利活動法人の３８．９％は「寄附と特に募集していない」と答えているそうですね。この数字の見方は２つあると思います。第一に、「寄附集めを怠っているＮＰＯが多い」という見方。つまり、日本でだって、ＮＰＯがもっと頑張ればもっとお金を集められるという可能性に期待させる数字として評価する見方です。第二は、「寄附を集めなくたってＮＰＯはやっていける」という見方。日本社会で寄附を集めても、手間ばっかりかかって集まるお金が少ない。だったら事業収入や助成をメインで考えてもいいじゃないかという見方です。
今日のシンポで、ＮＰＯ法人 ケア・センターやわらぎの石川代表理事の話を聞いていて、彼女の「寄附を集めるエネルギーと労力、その他もろもろを考えると、一生懸命文書をつくって市長などにアプローチして資金を得るということでもいいのでは」という発言に私も考えさせられました。
ここで、「本来○○すべき」という哲学論争はちょっと脇においておきます。純粋にＮＰＯ経営的に見て、「寄附」が無くてやれるＮＰＯがあるなら、それでもいいのではないかということについて考察します。
株式会社は何故上場するのか
ちょっと寄り道して、民間企業の資金調達について考えて見ます。今や１円でも株式会社を作れるようになりました。何か、事業をやりたいと思えば、スグに株式会社を作ることはできます。株主は自分ひとりか、せいぜい身内など数名で始めるケースが多いようです。最初から上場して一般の株主から資金調達を考える人はいませんし、実際問題として不可能です。
しかし、こうした「個人事業」的な株式会社ですが、経営合理性の観点からは、「市場で株主を募る」株式会社よりメリットもあります。
そうです、株式を公開して、一般株主を抱えてしまうと、資金は調達できますが、反面、株主総会での説明責任や、各種問い合わせへの対応、株券の発行事務が発生してしまいます。なにより、株主による経営チェック（時には口出し）が入りますので、経営者としては、手かせ足かせがはまるような感じがすることもあります。
特に事業の立ち上げ時期に、売り上げも安定しないなかで、そんな手間な管理業務に時間と労力を割いていたのでは、何時までたっても事業が軌道に乗らないですよね。
ここで、やはり公開するかしないかのポイントは、第一に、経営自体の余力・安定性（軌道に既に乗っているか）であり、第二に、資金調達効果（上場しているという社会的信用効果も含みます）と手間との兼ね合いであるといえます。
最近、あえて上場企業が自社株を買い戻して、上場廃止にしてしまうケースも散見されます。結局はメリットがないと上場している意味も無いですよね。
さて、本論のＮＰＯ経営と寄附集めです。
寄附者は、議決権を持つ「会員」とは違いますので、ＮＰＯが寄附集めを始めたからといって、いきなり寄附者がＮＰＯ経営を左右する権限は法的にはありません。しかし、社会通念上、寄附した人がいろいろ聞いてきたら、きちんと答えないといけませんし、それなりのフォローは必要です。ある意味、キャピタルゲインだけを狙っている株主よりも、よっぽど手のかかる相手です。
他方で、寄附集めを積極的に行う費用対効果はどうでしょうか？
実際に、日本の一世帯あたりの年間寄附額が３千５百円を切っており、アメリカの一人当たり２０万円弱と大きな乖離があるように、一生懸命寄附集めしても、多くが千円とか２千円とかの寄附であれば、管理コストの方がかかってしまうと考えるのも無理はないなと思います。日本では、やはり小口寄附が非常に多い。しかし、その割には、たとえ１０００円しか出していなくても、ＮＰＯの活動に色々意見をいいたくなる方は多いですので、結構やっかいな問題です。
アメリカで寄附集めに携っていたとき、やはり感じたのは、寄附のロットがでかいということ。もちろん小口もありますが、金持ちの方とかが、「共感」すると、ボンと１万ドル（百万円）くらい出てくることは普通な感じでしたし、逆に小口寄附する人も、「このくらいの小口寄附でＮＰＯの管理コスト負担をふやしちゃな・・」というような、大人な感じの「慎み深さ」を感じることがありました。
事業系ＮＰＯ（事業収入がメインのＮＰＯ）にとって、寄附集めの費用対効果感がでる「損益分岐点」を考えると、社会全体の寄附単価のインフレ化が前提として必要なことかもしれません。しかし、現状で考えると、事業系ＮＰＯにとって、寄附集めを積極的に行う「費用対効果感」は低いということはあるんでしょうね。
ちょっと長くなりましたので、とりあえずこのへんで。このテーマ、ちょっと個人的に面白いので、もう少し考察します。
