ファンドレイジング道場

民間非営利組織(NPO)や社会起業家のファンドレイジング(資金調達)についての考え方、アイデア、事例などを発信しています!

カテゴリ: NPOセクター成長を規定する10の要因

いまの日本には「信用できない企業が多い」と思っている人は60%。「信用できない人が多い」も64%で、企業や人への不信感が目立つ――朝日新聞社が全国3千人を対象に2月〜3月上旬に郵送で実施した全国世論調査(政治・社会意識基本調査)で、世の中の信用・信頼が揺らいでいる実態が浮き彫りになった。政治家や官僚への信用は18%と低く、教師や警察は60%台。裁判でさえ72%だが、家族には97%の人が信用をよせている。(朝日新聞)

こんな記事が、21日のアサヒネットに出てました。

偽装問題とかいろいろあって、企業への信用がゆらいでいるという記事です。

この記事自体、「ふーん」というような記事ですが、NPOにとって、この状況は決して悪いことではありません。

NPOセクターの成長を規定する10の要因という分析でまとめましたが、各社会のNPOセクターの比較研究を検証していくと、ひとつの要素に、「ビジネスセクターの信頼性が高い社会ではNPOが成長しにくい」という要素があります。


【引用:2006年1月25日付け当ブログ抜粋】
要因その9:産業的要因 
 社会における営利セクター(ビジネスセクター)の果たす役割によって非営利セクターが規定されるという考え方もあります。ハンスマンは、当該社会において、通常の契約機能が消費者に対して十分な監督・チェック機能を提供しえず、その結果として、社会に契約についての一定の不信(distrust)が存在する場合、非営利セクター成長の要因になると指摘しています。サラモン等は、これをTrust Theoryと呼びました。一例をあげれば、日本においては、企業が行政機関の比較的強い指導監督下にあることから、国民も、企業が提供する社会サービスに対して一定の信頼を置いているという状況があります。

ハンスマンやサラモンは、企業が社会から信用されない状況では、非営利セクターへの信頼性が相対的に高まるということを指摘しています。

日本社会では、企業自体が従業員の雇用確保や社会的背徳行為への抑制などの面で、長年社会から一定の評価を得てきたところがあるのかもしれませんが、最近、かなりそうした面は揺らいできています。

そうしますと、いきおい、NPOへの期待が高まるという構図です。

ん・・? とすると、企業が社会貢献に目覚めてCSRを推進するというのは、果たしてNPOの長期的成長にはプラスになるのか、マイナスなのか・・・?

ひとつのパラドックスですね。

日本の寄付文化や市民社会のルーツを探るうえで、興味深い調査があります。

明治維新直前の日本人の識字率の高さに関する調査ですが、Doreによれば、明治維新時点で、日本国内には1万を超える非政府の学校があり、男子の43%、女子の10%が読み書きが出来たそうです。

この数値は、当時、産業革命を受けて経済成長を遂げていた英国よりも高いものであったようです。こうした一般市民の識字率の高さは、藩校等の政府系学校よりは、民間の学校組織によるところが多く、そうした学校も、地元の商人が(寄附)しあって設立したり、篤志家が資金を出して設立したケースが多かったようです。  

当時の徳川幕府自体に、一般市民の識字率向上に向けた政策的意図があったとは考えられず、また、武家社会にあって、行政サービスの対象はあくまで武家中心であったことを考えると、当時には一般市民が自ら社会サービスを提供しあう(相互扶助)体制が必要不可欠であったものと考えられます。

日本の協同組合型・隣組型の組織と、相互扶助的な公的サービス提供機能は、日本型のひとつの「型」ともいえるかもしれません。

 
 もうひとつの日本の非営利セクターのルーツは、協同組合的な組織です。

 日本における協同組合の生まれは、「たのもし講」と呼ばれるグループ内のマイクロ・クレジットを通じた相互扶助システムで、中世期に中国からその手法が伝わったとされています。  

 こうした日本における相互扶助組織は、近代にいたるまでの歴史を通じて、活発な活動を展開してきています。「隣組」は、同一地域における10から20世帯がひとつのユニットになるというイメージで捉えていただければと思いますが、徳川時代には全国に広がりを見せています。

 もちろん、「隣組」は、政府(幕府)が住民を管理し、コントロールするための末端ユニットの機能を期待して作られたものであったんですが、そうした、「当初政府が想定した機能」を超えて、住民の相互扶助による社会サービスの補完機能を有していたと評価されている面もあります。また、明治維新以降も「街会所」と呼ばれた組織のように、農作物を共同管理したり、金融機能を有したり、地域内の貧困者への支援を行う準「隣組」型組織も主要都市や村落に派生して形成され、1972年の調査では、その運営資金の70%は寄附や会費であり、30%が行政からの補助という、独立性が相対的に高いものとなっていたようです。

 農村社会型の社会構造であった日本社会では、こうした「地域共同体」がかなりフィットしたことは事実のようです。実際、国際協力の世界でも、途上国の農村でまさに作ろうとしている村落共同体的組織というのが、明治時代の「街会所」や「隣組」的な機能ときわめて類似しているというのも、なかなか興味深いところです。


 


昨日、日本における最初の非営利セクターの活動は、仏教の実践と大きく関連していたといったルーツについてご紹介しました。

聖徳太子は、日本国内では優れた国家元首としての評価が知られていますが、彼自身のもうひとつの側面は、フィランソロフィスト(慈善活動家)としての評価です。

彼自身、6世紀から7世紀にかけて、いくつもの寺院を建設し、その寺院において障害者や貧困者の生活支援を行っています。こうした動きを皮切りに、仏教寺院を拠点とした事前活動は13世紀、任政という仏教指導者の下で更に強化され、拡大していきます。

聖徳太子って、7人からかの話をいっぺんに聞けるとか、「和をもって尊しとなす」といった言葉で有名ですが、慈善活動家的な側面があったというのはなかなか面白いところです。

 しかしながら、更に面白いのは徳川時代に入ってからの仏教寺院とチャリティーの関係です。徳川時代に入り、徳川幕府の政策により、仏教寺院において住民の戸籍管理を行うこととなってから、このムーブメントは急速に減退したようです。いわゆる「檀家制度」と呼ばれるこの新施策は、個々の寺院の努力に関わらず、地域毎に半強制的に檀家を決定するというものです。その結果として、各寺院は自動的に収入源が決定し、安定的な収益が約束されることになっちゃったようです。

 そうすると、各寺院は檀家を増やそうとするモチベーションを失い、潜在的顧客を開拓するようなチャリティーといった行動に出ることが極端に減少したようです。

 アメリカでも、NPOセクターが急成長したひとつの要因にあげられるのがプロテスタント教会の各派の競争があります。プロテスタント教会(カトリックと違い、プロテスタントは各派に細かく分かれている)では、宗派ごとに信者獲得競争が激しく、それがアメリカでは「チャリティー競争」となって現れたという分析があります。

 その結果、NPOへの資金還流が教会を通じて進んだというのが、アメリカNPOセクター成長の一因だというのです。

 日本では、江戸時代に、幕府は、寺院同士にまったく競争をさせないという施策をあえてとりますので、そのことが、日本国内における「宗教的チャリティ活動」を減退させた要素は大きいように感じます。

 坊さんだって、目の前に何か目標がないとやる気でませんもんね。

もかちゃん、サンフランシスコからの久しぶりの投稿、ありがとう!
元気にがんばってそうですね。引き続き、サンフランシスコからの「最新ファンドレイジング事情」心待ちにしています。

さて、先日も触れた「日本の寄付の文化」の話ですが、ちょっと続編で触れたいと思います。(ちょっと固い話ですみません)

日本の多くの人々が、日本の非営利セクターは近年まで極めて脆弱であったと考えています。しかし、私は、実は、日本の非営利セクター的なものは長い歴史を有し、日本の文化的、政治的システムに深く根を下ろしてきていると考えています。

これは、厳密にいうと、今風の「非営利セクター」のようには見えないものかもしれませんが、「行政でもなく、営利活動でもない」社会的機能としての相互扶助システムが日本社会に存在し、それが長年の間、組織化されていたという意味です。

どんな社会でも強制的徴税機能をベースとした行政による社会サービスの提供と、市場原理に基づく、営利型社会サービスの提供だけでは、必ず社会的な抜け落ちが出てきてしまいます。すべての社会は、その差を埋めようという社会的な動機が働きます。これが、かつてのローマ帝国時代における、政治的リーダーによる私財を投じたインフラ整備事業であるわけです。あるいは、中世ヨーロッパの教会組織を中心とした教育や福祉サービス機能の提供であったりする訳です。

その意味では、日本には非営利セクターにおいて、2つのルーツがあると思っています。第一は仏教の慈善活動(チャリティー)に基づくものであり、6世紀から7世紀に大きなムーブメントが発生してきています。第二は協同組合や町内会的な隣組組織であり、それらの存在目的は公共の福祉というよりは、構成員の相互扶助ではあったものの、中世期にはその活発な活動が報告されています。

その伝統の中にあって、明治維新以降は、欧米的な富裕層や貴族などによる「チャリティー」の概念が日本社会に入ってきます。戦前の社会福祉事業の非常に多くの財源が皇族の寄付であったということからも、明治維新後の日本社会が、欧米社会の慣習を取り入れようと努力したあとが伺えます。これが、2つのルーツの上に乗っかった、「第三の流れ」だと思っています。


 

東京経済大学の講演があったので、ひさびさに大学にいきました。

学校のキャンパスっていいですねえ。

丁度落ち葉が舞う季節で、非常に気持ちい雰囲気でした。

みんな楽しそうでしたね。

講演自体は、まあ、想定どおりの出来だったんですが、話す内容をまとめていた過程で思ったんですけど、経営って、日本の社会風土に影響されますねえ。

これは、企業も行政もNPOも一緒だと思いますが、いろんな組織経営の事例と見ていくと、経営というものは合理的な観点からなされるべきだし、なされるものではあるんですが、その「合理性」が何をベースにした合理性かというのが曲者です。

組織構成員の幸福と安定性の最大化というところに「合理性」のベースがおかれると、結果を考慮しない内向きの組織になってしまうことになります。

日本の組織経営って、どうしても「同質化」しやすいといわれます。仲間意識、内輪意識の強い社会なので、どうしてもどんどん内部構成員の同質化が進みます。そこには、組織全体としての合理性の追求という姿勢がどうしても欠けてきてしまう。

そうした「同質化した組織」に風穴をあけるというためには、相当のショック療法が必要なときがあります。そのひとつが、若い社員が入ることによる刺激やトップが外部からくるといった異例の人事なんでしょうね。

一度、日本の組織の同質化問題についても特集しますね。

ここまで、各国比較において、非営利セクターの成長を左右する10の要因について見てきました。これらの要因は、多くの場合、複合的に関連していますが、試しに、私が長く滞在して、NPO分析を行ってきたアメリカとインドネシアと日本との比較で、この要因を照らし合わせてみるとどういうことがいえるでしょうか?

 かつて私がアメリカで各国比較研究をしていた時の分析の結果だけご紹介します。
(なお、ここでは、各国の比較の視点から、それぞれの要因が+(相対的にNPOセクターにポジティブ)、△(平均的でどちらともいえない)、−(相対的にNPOセクターにとってネガティブ)という形で整理しました)


非営利セクターの成長を支える10の要因 10の要因の適用状況
             
1.経済的要因         米 +/ イ△/ 日+
2.法体系要因         米 +/ イ−/ 日−
3.個々の法律要因         米 +/ イ−/ 日−
4.政策的選択要因         米 +/ イ−/ 日−
5.需要側(多様性)要因     米 +/ イ+/ 日−
6.供給側(社会的動機)要因1   米 +/ イ+/ 日−
7.供給側(競合関係)要因2     米 +/ イ+/ 日−
8.文化的(宗教的)要因     米 +/ イ+/ 日−
9.営利セクター要因         米 +/ イ+/ 日−
10.歴史的要因         米 +/ イ−/ 日−

この表の内容についての個々の分析についての詳細は、後日www.npocenter.orgでも紹介していきますのでそちらをご参照ください(ちょっと長くなりますので)。

ここでのポイントは、上記の表のように、アメリカという、NPO大国として知られている国は、10の要因の全ての項目で+の評価をすることができます。他方、インドネシアでは、宗教的要因や民族的多様性の要因等では+ですが、法体系や政策選択(中央集権的な国家体制を長年とってきていた)の視点ではマイナスが出てきます。

他方、日本について分析すると、経済的要因以外ではほとんどマイナスがつくことが分かります。私の実感値でもそうですが、相対的にみて、日本では、非営利セクターの成長について社会的、制度的、歴史的にディスアドバンテージが多くあるということがいえると思います。

ファンドレーザーの視点から、この状況をどのように理解すると良いでしょうか。私の理解では2点あります。第一には、実は、詳しく見ていくと、ひとつひとつの要因は、時間をかけて克服可能なものが数多く含まれています。ですので、こうした各国の違いや日本のユニークさを理解しつつ、ひとつひとつの課題を克服していくことが
まず重要です。「日本社会が成熟していないから・・」という言葉で寄付が集まらないことを嘆いていた方を見たことがありますが、その言葉を因数分解するとこの10の要因の克服ということになると思います。

第二には、ファンドレイジングを行う際や外国のファンドレイジングスキルを日本に導入する際には、こうした背景の違いをきちんと理解する必要があるということです。各国の歴史や文化にあったやり方というのが必ずあると思います。

要因その6:供給側(Supply-side)要因1
 非営利セクターの成長にコミットする人のモチベーションの源が国によって違うという要因もあります。それは単なる経済的要因のみならず、自らの一家の名前を社会認知して欲しいとか、社会的ステータス、政治的影響力や宗教的な動機付けによります。非営利セクターの成長に貢献することで得られるこうした「目に見えない利得(intangible benefit)」が社会的にどのように認知されているかで、人々が非営利組織を立ち上げたり、寄附をしていくといった行動に影響を与えるという視点です。更に、そうした社会認知は、世代を超えて社会に形成されてきているものであるので、容易に変えることは難しいといわれています。例えば、伝統的に非営利組織のリーダーとなることが政治的な影響力行使と関連する社会とそうでない社会では、非営利セクターの成長に大きな差異が生じてしまうということがいえます。

要因その7: 供給側(Supply-side)要因2
 この供給理論を別の視点から整理しているサラモンのような学者もいます。彼らは、宗教間の競合関係が激しい社会ほど、非営利セクターの成長が著しいという分析結果を発表しています。米国のように、キリスト教の各派が狭い地域で信者獲得のための競合関係にあるような社会では、それぞれの宗派が競い合うようにしてチャリティや地元社会の福祉向上に努めようとします。その結果として、地域社会における非営利セクターが成長してくるということがおこる訳です。日本では江戸時代の檀家制度がこうした競争を抑制してしまったところはあるかもしれません。

要因その8:文化的要因
 幅広く認識されている要因のひとつが宗教的要因による非営利セクターの成長の格差でしょう。「非営利組織はしばしば強力なイデオロギー −特に宗教の− 影響を受ける。価値観との整合性が、方法論的整合性を超える。価値観や宗教的伝統が、非営利組織の規模と形態を規定するといえる。」(DiMaggio & Anheier 1990)といった見方は90年代前半まで良く見られ、現在においても一定の評価を与えられているともいえます。確かに、寄附という行為やボランティア、チャリティーといった行動様式は、優れて本人の利他的な行動規範や価値観から導き出されているものであり、宗教的なものからの影響からは無関係ではいられないとうのは事実でしょう。しかしながら、よく単純化されているように、キリスト教型社会であることが非営利セクター成長にとって決定的に重要な要因であるかという点については、様々な異論があります。例えば、「要因 廚埜正擇靴拭峽从囘理由」との関連で非営利セクターとキリスト教社会を見ると、現段階では、経済成長を達成した社会が世界的に数少なく(所謂「先進国」という整理では、キリスト教系の国以外では日本のみであり)、一般化して結論づけるには余りに事例が限られていると言えます。

要因その9:産業的要因 
 社会における営利セクター(ビジネスセクター)の果たす役割によって非営利セクターが規定されるという考え方もあります。ハンスマンは、当該社会において、通常の契約機能が消費者に対して十分な監督・チェック機能を提供しえず、その結果として、社会に契約についての一定の不信(distrust)が存在する場合、非営利セクター成長の要因になると指摘しています。サラモン等は、これをTrust Theoryと呼びました。一例をあげれば、日本においては、企業が行政機関の比較的強い指導監督下にあることから、国民も、企業が提供する社会サービスに対して一定の信頼を置いているという状況があります。

要因その10:歴史的要因
 個人乃至社会が市場に依存するか、非営利セクターに依存するか、或いは政府に依存するかは、事実上、個人乃至社会の自由な選択の結果として決断されているものではなく、過去の歴史的経緯や発展のパターンといった社会が共有する過去の経験に基づき規定されているという考え方があります。ディマジオ等は、非営利セクターの性格は、市場の変化に即応しなければならない企業(営利)セクターや国民・議会への説明責任を有している政府セクターの性格に比べて環境変化に対応した変化が緩やかであるとしています。そのため、長期間かけて形成された社会的認識に基づいて形成された非営利セクターは、同じ「社会的認識」と言う目に見えない(それだけに明確に判別し難い)相手の変化により、少しづつその性格を変化させていくともいえます。


世界各国のNPOセクターの成長度合いを左右する要因が10あるのではと先日いいました。実は1970年代くらいから、世界各国の数多くの学者がいろいろとNPOの各国比較から、何故違いが生じるのかについて、論文を発表しています。私は、アメリカで一度、こうした過去の文献をいろいろ読み込んだ時期がありました。その結果、私なりに整理したのがこの10の要因です。

今日は、まず、最初の5つの要因を列挙します。

〃从囘要因
 どこまでいっても、やっぱり経済が成長して、社会的中間層(要は余裕のある人たち)が育ってこないとNPOセクターは育ってこないということです。この議論は70年代から言われ続けてきました。しかし、最近では、社会的中間層が同程度に成長している国同士でも、NPOセクターの成長度合いに違いがあることから、他の要因に対する関心が高まっています。

∨‖侶詫廾 
 国家の法体系は、Common Law系(英国、米国等)とCivil Law系(ドイツ、フランス等)に分かれます。Common Law体系国では、NPO的組織の存在は、自然権として扱われていますが、Civil Law体系国では、国家がその存在を認めたところから正式に存在しているものとして扱われます。一般的に、Common Law体系国の方がNPOの法人としての活動が容易であるといわれています。日本はCivil Law体系国といえるでしょう。

8帖垢遼[要因
 上記△箸皀ーバーラップしますが、個々のNPO法の規定の要因もあります。これは、アメリカのように病院や大学、市民組織まで含有したひとつのNPO法の骨格を有している国もあれば、日本のようにそれぞれの法人特性に併せて、別の法律が多数存在して、監督官庁も多数あるような国もあります。どうしても、法律が複雑化すればするほど、意欲やる新規事業者の参入を阻害する等の悪影響はあるでしょう。また、税制(寄附控除等の免税措置)も重要な要素です。

だ府の政策選択要因 
 特に政府の福祉政策がどのようなものであるのかということは、NPOの成長に大きな相関関係があるという指摘が多くあります。所謂「福祉国家」では、市民への社会サービスが行政から多く提供され、かつ税金が高い傾向がありますので、その分、NPOセクターへの資金流入や社会の期待値が減るというものです。ただし、これには、アメリカの1920年代のThe Great Society政策で政府が福祉支出を急増させた際にNPOセクターが成長したという結果が説明できないという批判もあります。The Great Society政策では、福祉支出が大きくとも、それを政府が直接使うのではなく、NPOセクターを通じて社会に還流させたことが影響しているといわれています。

ゼ要側要因(多様性要因)
 社会を構成するひとびとが多様であればあるほど、NPOセクターの成長の余地があるという説です。アメリカがその好例ですが、構成員が多様であるために、政府が一律で行うサービスで、その多様な構成員を満足させることが出来ないため、コミュニティのニーズにあった社会サービスをNPOが担っていくという構図になります。単一民族型社会では、行政の画一的サービスでも構成員の大多数が満足する可能性があるため、逆にNPOセクターが育ちにくいということもあります。

日本とアメリカは社会も文化もまったく違った国です。例えば社会が考える「公正」というものの価値観も大きく違うように思います。

米国は、上位1パーセントの家族が保有する財産が下位90%の家庭の財産を上回る国であり、ビルゲイツの個人資産だけで米国の下位40%の家庭の資産を上回るのです。これは狩猟民族としての名残りでしょうか。競争による勝者と敗者の存在を基本的に前提とする社会です。ある国際世論調査が明らかにしているとおり、アメリカ、カナダ、ノルエー、フィンランドといった国は、「自由」を「平等」よりも価値の高いものと認識している反面、日本、イギリス、スペインでは、「平等」を「自由」より価値の高いものと認識しています。

米国は、国の成り立ちからして、欧米の硬直した社会から脱却して来た移民たちが作っていますので、「政府」特に「中央政府」が嫌いです。反面、自分達のコミュニティーをとっても大切にする傾向があります。

こうした社会の価値観や慣習といったものが、ファンドレイジングの前提にどのように影響を与えるのかというテーマは、長いこと私の心を捉えて離しません。「日本社会はキリスト教が浸透していないから」という言い方をする人がいます。それは、果たして日本のファンドレイジングの困難さを説明するに十分な理由といえるでしょうか?

私は、アメリカのARNOVAという、ボランティア学会長をしていたDavid Hammackという歴史学者に師事していたころ、彼のアドバイスを受けながら、日米やインドネシアの比較をしつつ、各国のNPOセクターの成長を規定するものが何かについて研究したことがあります。

その要因は10に分けられるというのが私の考えです。その10の要素が全て揃っているのがアメリカでほとんど無いのが日本です。フィリピンやインドネシアは中間くらいという感じです。この要素が揃っている社会ほど、NPOセクターの成長は容易であると思います。

明日以降、この10の要因についてご紹介します。

このページのトップヘ