大阪ボランティア協会の早瀬常務理事が、阪神淡路震災の時のボランティアの心得をメールで共有してくれました。

これから、「ボランティア」のできる役割として重要なことは、「個々に応じる」ということだとおっしゃっています。

以下、その時のマニュアルを引用します。

(訪問おたすけ隊・活動マニュアル)

「応援する市民の会」のめざす活動

1995年1月27日版


数字に還元できない精神的な痛み

大震災から10日を経た現在も、被災地の人々を襲った災害の全容は把握されていません。 というのも、まず、確かに行方不明者の数は減ってきましたが、被災された 方々の生活困難とはそうした数字で示しきれるものではないからです。
災害の全容には、一人ひとりの方が被っている様々な生活困難や心の傷も含むものです。家が全壊したということは、建設費○千万円の建物が失われただけでなく、使い込んだ家具を失い、かけがえのない思い出のこもった記念品を失ったということでもあります。命の喪失にいたっては、はかりようもない重さを持ちます。


一人ひとりで異なる悩み

しかも、そうした辛さ、苦しさは、一人ひとり違います。「西宮市で○○が不足している」と聞いて、その物品を市役所に送れば問題が解決すると考えるのは、実は間違いです。確かに災害発生当初は、すべての人に共通に必要な水や主食が不足しました。このような段階の問題は、必需物資を届けることで解決できました。
しかし今は、ある人は倒壊した家の中から先祖のご位牌を探し出すことが一番の問題であり、また別の方は家の片付けをしようにも幼い我が子の世話に追われてしまうことが一番の悩みなのです。ある人は借家の権利がどう守られるかを知りたいのですが、別の人は受験を控えた娘のためにホームステイを申し出てくれる人をこそ、まず探したいのです。
生活用品の不足といっても、ある人は持病の薬が、またある人は毎日遊んでいたファミコンが、またある人にとってはCDプレーヤーがないことが、一番の欠乏感をもたらします。


「全体の傾向」に収まらない「私の問題」

一口に「災害の被害」といっても、その現実は、このように相互に比較しがたく(優先度をつけにくく)、また一人ひとり違う多様なものです。
そこで、必要なサービスを適切に供給することは非常に難しくなります。小さな災害ならば、個々のニーズを丁寧に聞いていくこともできますが、戦後最大の自然災害となったこのたびの大震災では、被災者があまりに多く、個々の状況を把握することがとても困難だからです。
つまり被災者の皆さんが“一番”困っている問題は、「全体の傾向」という大雑把な言葉には収まりきらないものです。一人ひとり違うものだからです。
しかし、どこの、だれが、どのような悩みを抱いているかをすべて把握することは、今の状況の中では、ほとんど不可能です。
一人ひとりにとって、もっとも重要な問題は何なのか? それは、「分かりません」としか答えざるを得ないのが、今の現状です。
「元の平安な暮らしを取り戻したい」「家を建ててほしい」「傷ついた家族が早く癒されてほしい」…。被災されたすべての人は、そう思っておられるでしょう。
しかし、そのために具体的に何をどう解決していくのか? それは一人ひとり違うのです。


私たちから被災された方々に近づいていく

では、そうした問題に、私たちはどう対処すれば良いのか?
被災地の外で発足し、その歩みもわずか7日でしかない当会では、ともかく次のようなことを始めていくことから始めました。

それは「尋ねる」ことです。

「何かお手伝いをすることはありませんか?」
「どなたか、困っておられる方をご存じありませんか?」
そう一人ひとりに聞いてまわる『御用聞きボランティア』です。


できることなら、なんでも!

そして、何かを求められ、それができそうならば、何でも応えていくということです。
つまり活動の内容は、『よろず相談』です。

・物資が足らないなら、救援物資の集積所に問い合わせる
(当会にも、ある程度のストックはあります。本部に連絡してください)。

・情報が分からないなら、一緒に調べる
(家の片付けに忙しい被災者の代わりに、市役所に尋ねにいくことはできませんか? ある いは取材に走り回っている新聞記者の皆さんは巨大な情報機関の一員です。何か耳よりな 情報を知っているかもしれません。もちろん、本部にも照会してくださって 結構です)

・子どもの世話で家の片付けができないのなら、ベビーシッターを引き受ける!
(ただし、子ども−特に幼児の世話は、とても難しく、危険さえ伴います。当会で“注意 事項”を整理していますから、必要でしたらご連絡ください)

大切なことは、普段、人と人との間にある“垣根”を超えて、大変な困難状況にある被災者の方々に、“私たちの側”から近づいていくことです。
実際、こうした「関係作り」の“成果”として、具体的な応援の要請も、数多く寄せられるようになってきました。


できないこと、不安なことを一人で抱え込まない

もっとも、あまりに意気込み過ぎたり、無理をすることは、絶対に避けてください。

たとえば、「家の解体の手伝い」といった相談が当会に寄せられています。
補修ということでは済まない壊れ方をしている家は、一旦、解体するしかありません。しかし、この作業は、元来、プロの仕事です。大変、危険が伴い、本来、ヘルメットが必要なほどの作業だからです(必要な場合は本部スタッフにご連絡下さい。用意します)。
そんな場合、すぐに本部に連絡してください。

また、一日では済みそうにない作業を頼まれた時も、同様です。
私たちは、今やたくさんの仲間を持っています。翌日も自分で引き受ける、ということではなく、本部事務局を通せば、他のボランティア仲間と協同できる態勢づくりも可能です。
要は 抱え込み過ぎない! ことです


案内チラシを配るだけでも、ボランティア

見知らぬ人(つまりあなたです)に「手伝いましょうか?」と言われて、すぐに「では、これをしてください」と言ってこられる方は、そう多くはないでしょう。つまり、気軽に相談される関係になることは、実は難しいのです。 その場 合は、

「では、何かお困りのことがあれば、連絡してください」

と言って、『会の案内』をお渡しするとよいでしょう。
それにより「緊急よろず相談所」である当会を、被災者の方につなぐことができるからです。 何も相談を受けなかった、何も手伝わなかった、ということがもしあったとし ても、チラシを配ることが、情報などから孤立している被災者の生活を支える端緒となることもあるのです。


「何もすることがなかった」ということも役に立つ

直接、お世話をすることがなくても、実は被災された方の応援になるもう一つの活動は、

地域の様子を直接見て、報告すること

です。これは、本部に戻ってから書いてもらう報告書提出の活動です。
皆さんには、被災地を手分けして歩いてもらいます。これは、この活動に参加する何十人ものボランティアによる共同現地調査でもあります。
担当地区の一つひとつの報告は部分的であっても、皆さんの報告が集まると、被災地全体の状況をきめ細かく把握することができます。
実は、毎日毎日、状況が大きく変わるのが、今の現実です。マスコミの報道は半日のズレがあり、これが「アナウンス効果」と呼ばれる悪影響を与えやすいわけですが、皆さんのフレッシユな報告では、こうした問題は起こりにくいのです。
結局、『訪問おたすけ隊』の活動は、次の3つの役割を同時に兼ね備えた活動なのです。

直接応援、 情報提供、 現地調査


最後に「応援する市民の会」では、皆さんに十分な「お膳立て」は用意できていません。
『訪問お助け隊』の活動はもとより、被災者の方々から依頼を受けている他の活動の場合も十分なマニュアル・手引書は用意できていません。
さらに参加してくださるボランティアの数に比べて、指示を出せるスタッフの数はとても少なく、手持ちぶさたな状態におかれてしまうかもしれません。
被災された方々に役に立ちたいと意気込んでこられた皆さんは、苛立たれると思います。
しかしそこで貧弱なスタッフ態勢を批判されることもとても大切ですが、それとともに自ら役に立てる活動を探す、より一歩前に出る姿勢を、是非、もっていただきたいと思います。

“指示を待つ”ボランティアではなく、“課題を探す”ボランティアを!

です。特別な指示がなくとも、まわりを見渡せば、あなたができることは幾らでもあります。 被災地ではゴミ収集の態勢が十分に回復しておらず、あちこちゴミだらけ。し かし膨大な地震ゴミを分別すれば、危険ゴミ以外は大阪などに持っていくことができます。あるいは雑然とした本部事務局の片付けを手伝ってくだされば、より機能的な活動を進められるかもしれません。さらに、事務局に集まる膨大な情報を整理する情報班も必要ですし…。
今回、初めてボランティア活動をされる、という方が、随分多いと思います。そんな皆さんには、随分厳しいお願いだと思いますが、できる範囲で、前向きに、元気に 活動を進めたいと思います。どうかよろ しくお願いします。

1.当会の活動の中でも「訪問おたすけ隊」の活動は、ボランティアの工夫次第で、さまざまな取り組みのできる活動です。活動の進め方も多様ですから、一グループを2班に分け、午前中に別れて活動し、昼食時に出会って互いの体験を交換してチェック。そしてふたたび午後の活動をしてみる、といった形で活動の幅を広げて下さい。

2.二次災害の危険がつきまといますから、必ず3人以上で行動してください。

3.「善いことをしているのだから、何でも許される!」ということはありません! 物理的にも精神的にも厳しい立場にある被災者に対して、あくまでも謙虚に活動して下さい。