今、読んでいて、面白い本があります。

「知の衰退」からいかに脱出するか (大前研一著 光文社)

という本で、日本人は個人としての「知」はともかく、「集団知」になると極端に弱くなることや、日本社会の「人を育てる」システムが、いかに時代遅れになってしまっているか、いまや中国や韓国、インドにいかに学ぶべき点があるかについて、非常に分かりやすくまとめています。

いつも、こういう本って、「ふーん」と思いながら読んだりするんですが、この本は、結構、今、私自身が問題認識として感じているところにドンピシャリとくるところがありました。


日本社会が、どんどん「低IQ社会」になってきていて、普通にすごしていると、どんどんとこの低IQ社会にそまってしまう。自分で考えず、リスクをとらず、それが社会全体としてのリスクにつながることを誰も恐れない。国家としてのIQが下がっている。

結果として、競争力を失い、仕事を失い、活力を社会が失っていっても、みんな気づかない。あるいは、自分たちが集団として「低IQ社会」になっていることの理由が分からないので、出口が見えない。中国や韓国、インドの成長が、「いつか日本が来た道をなぞっているんだ」と見誤ってしまう。

中国の歴史上例を見ない徹底的な地方分権化が経済のダイナミズムを生み、外資を呼び込んでいることを知らず、韓国のエリート大学は英語で授業をし、国連トップやグローバル企業のアジア部長の輩出をめざしていることや、サムスン電子が若手社員を1年間、海外武者修行に出して現地化を進めている話をしらない。

「考えない」日本社会への警鐘として面白い本です。

そうした中で、興味深い数字があります。

日本人1人が死亡する際に抱えている総資産は平均3500万円であると。

先進諸国と比較しても、あり得ない水準であると。

そうしたおカネが、廻らない。

高齢者は、とにかく老後が不安だという。大前氏は、この「不安」を分解して、整理することで、不安は減ると力説する。

この平均3500万円という数字は、大きな数字だと思います。

「21世紀の教養とは?」

さらに、これから、個人として、世界で伍していくビジネスリーダーの条件として、大前氏は、「教養」について面白い分析をしています。

「教養」を持っていることは、世界でビジネスをして、信頼されていくためには、とても重要な要素であると。それは、単に哲学をしっているとか知識があるといったことではなく、実は、かつてのビジネスシーンでは、ずばり、[文学」と「音楽(クラッシック)」であったというのが大前氏の見方。

これが身についていると、ビジネスをするうえで、パスポートや紹介状の役割を果たしたことが何度もあるといいます。

しかし、最近、ビジネスのエグゼクティブたちが変わってきたと言います。

こうした伝統的な「教養」を持っていない人たちが出てきた。もう文学と音楽では通用しなくなってきた。

では、21世紀の新しい「教養」はというと・・・・

ずばり、

「あなたは、近年の環境問題とその対策について、どう思うか」
「アフリカのエイズの人たちのために、あなたは最近何をしたか?」

という「地球市民として、具体的にどのように考え、どのようなアクションを起こしているか」という、「知識」「見識」そして「経験」が問われるようになってきているというのだ。


これは、全く新しい状況で、グローバル化が、人々の意識、そして優先順位を変えたと大前氏は語る。

氏はこれを「21世紀の教養」として、日本のビジネスマンが身につけなければ、再び、「教養のない人」として国際社会で評価されないと警鐘をならす。

時代は変わりつつある。

「寄付なんて興味ないよ」
「会社はビジネスで利益をあげて、税金を納めるのが最大の社会貢献」

その言葉が、グローバルには意味を持たなくなりつつある。

でも、日本の企業やビジネスマン、そして行政は、そのグローバルな「ゲームのルールの変化」に気づかない。

ファンドレイジングをすることは、ひょっとすると、日本のビジネスエリートに、世界で通用する「教養」をもってもらうきっかけを提供していることになるかもしれない。

そのことが、日本の国際競争力や、日本のビジネスエリートへの評価を取り戻すきっかけになるかもしれない。

大前氏の議論を読んでいて、「ファンドレイジングは、社会を変える」ということを改めて確信した次第です。

堺屋太一さん、大前研一さん

2人の共通するのは、日本の未来を見据えて経済、社会、行政がどう変革していくかを一生懸命提言する人たち。

そして、2人に共通するのは、今、寄付や社会貢献が、日本を次のステージにもたらす、ブレイクスルーポイントのひとつになっていると感じているということ。

2020年、寄付10兆円時代の実現は、NPOのためだけではなく、受益者のためだけではなく、企業にとっても重要なことなのです。