要因その6:供給側(Supply-side)要因1
 非営利セクターの成長にコミットする人のモチベーションの源が国によって違うという要因もあります。それは単なる経済的要因のみならず、自らの一家の名前を社会認知して欲しいとか、社会的ステータス、政治的影響力や宗教的な動機付けによります。非営利セクターの成長に貢献することで得られるこうした「目に見えない利得(intangible benefit)」が社会的にどのように認知されているかで、人々が非営利組織を立ち上げたり、寄附をしていくといった行動に影響を与えるという視点です。更に、そうした社会認知は、世代を超えて社会に形成されてきているものであるので、容易に変えることは難しいといわれています。例えば、伝統的に非営利組織のリーダーとなることが政治的な影響力行使と関連する社会とそうでない社会では、非営利セクターの成長に大きな差異が生じてしまうということがいえます。

要因その7: 供給側(Supply-side)要因2
 この供給理論を別の視点から整理しているサラモンのような学者もいます。彼らは、宗教間の競合関係が激しい社会ほど、非営利セクターの成長が著しいという分析結果を発表しています。米国のように、キリスト教の各派が狭い地域で信者獲得のための競合関係にあるような社会では、それぞれの宗派が競い合うようにしてチャリティや地元社会の福祉向上に努めようとします。その結果として、地域社会における非営利セクターが成長してくるということがおこる訳です。日本では江戸時代の檀家制度がこうした競争を抑制してしまったところはあるかもしれません。

要因その8:文化的要因
 幅広く認識されている要因のひとつが宗教的要因による非営利セクターの成長の格差でしょう。「非営利組織はしばしば強力なイデオロギー −特に宗教の− 影響を受ける。価値観との整合性が、方法論的整合性を超える。価値観や宗教的伝統が、非営利組織の規模と形態を規定するといえる。」(DiMaggio & Anheier 1990)といった見方は90年代前半まで良く見られ、現在においても一定の評価を与えられているともいえます。確かに、寄附という行為やボランティア、チャリティーといった行動様式は、優れて本人の利他的な行動規範や価値観から導き出されているものであり、宗教的なものからの影響からは無関係ではいられないとうのは事実でしょう。しかしながら、よく単純化されているように、キリスト教型社会であることが非営利セクター成長にとって決定的に重要な要因であるかという点については、様々な異論があります。例えば、「要因 廚埜正擇靴拭峽从囘理由」との関連で非営利セクターとキリスト教社会を見ると、現段階では、経済成長を達成した社会が世界的に数少なく(所謂「先進国」という整理では、キリスト教系の国以外では日本のみであり)、一般化して結論づけるには余りに事例が限られていると言えます。

要因その9:産業的要因 
 社会における営利セクター(ビジネスセクター)の果たす役割によって非営利セクターが規定されるという考え方もあります。ハンスマンは、当該社会において、通常の契約機能が消費者に対して十分な監督・チェック機能を提供しえず、その結果として、社会に契約についての一定の不信(distrust)が存在する場合、非営利セクター成長の要因になると指摘しています。サラモン等は、これをTrust Theoryと呼びました。一例をあげれば、日本においては、企業が行政機関の比較的強い指導監督下にあることから、国民も、企業が提供する社会サービスに対して一定の信頼を置いているという状況があります。

要因その10:歴史的要因
 個人乃至社会が市場に依存するか、非営利セクターに依存するか、或いは政府に依存するかは、事実上、個人乃至社会の自由な選択の結果として決断されているものではなく、過去の歴史的経緯や発展のパターンといった社会が共有する過去の経験に基づき規定されているという考え方があります。ディマジオ等は、非営利セクターの性格は、市場の変化に即応しなければならない企業(営利)セクターや国民・議会への説明責任を有している政府セクターの性格に比べて環境変化に対応した変化が緩やかであるとしています。そのため、長期間かけて形成された社会的認識に基づいて形成された非営利セクターは、同じ「社会的認識」と言う目に見えない(それだけに明確に判別し難い)相手の変化により、少しづつその性格を変化させていくともいえます。