ファンドレイジング道場

民間非営利組織(NPO)や社会起業家のファンドレイジング(資金調達)についての考え方、アイデア、事例などを発信しています!

外国資金に依存する途上国NPO
 私は、もともとは国際協力分野が専門ですが、インドネシアで仕事をしていたときのことです。Resource Allianceという国際NPOが主催してバリで開催されたNPOの財務的自立発展性についての国際会議に出席しました。世界20ヶ国から、200団体が集まっていました。そこで議論されていたテーマのひとつには、特に途上国の開発系NPOがいかに外国ドナー資金に依存しているか、また、彼らがいかに国内の富裕層に対してファンドレイジングを行っていないか。という問題がありました。

 日本ですと、世銀や国連が日本の国内で活動するNPOに助成するというイメージはありませんが、途上国では、NPO向けの最大の資金供給者が、国際機関や先進国援助機関ということは珍しくありません。そうしますと、ともすれば、地道に寄付を募るより、美しいプロポーザルを一本かけば、100人のスタッフを雇って事務所を建て直しても余るくらいの資金が国際機関等から手に入るという構図になり、途上国のNPOは、優秀なプロポーザルライターを雇うことが経営安定の必須条件ともなってきます。

 そうした中、そのバリでの会議で、ヴィエトナム系のカナダ人がいいことを言っていました。「ファンドレイジングは、単に資金を集めるという技術ではない。そのNPOとそのNPOが所属する社会との重要なコミュニケーションの手段なんだ。自分の国内で資金が集められないということは、自分達の活動の意義をきちんと自分の国の人たちに理解させられていないということだ。そういう社会から遊離したNPOになってはいけない。」これは、会議参加者の大半を占めた途上国のNPO参加者に向けられたメッセージでしたが、成る程と考えさせられました。


「お願いする」のではなく、「解決策を提案する」のだ。

 もうひとつ、私が印象に残った言葉があります。オハイオ州のシンシナティにある、ある社会サービス系のNPOのファンドレイザーの言葉です。彼女は、ファンドレイジングの分野では、大変な成功を納めていて、評価も高い方でしたが、彼女があるワークショップで、とにかく何度も強調していたことがあります。

私は、寄付をお願い(ask)したことはない。私の団体は、社会のある問題に関して、解決策を持っている。私の仕事は、その問題が解決して欲しいと願っている人(寄付者)を見つけ出すこと。そして、その人に、私たちの団体の持つ解決策が、その人の願いを実現するのに役立つことを理解してもらうこと。その人の願い(夢)を実現するため、私たちの団体や解決策が、その人の人間としての情熱(passion)をかけるに足るものであることを「感じて」もらうこと。」 

 もちろん、彼女のように振舞うためには、まず、自分の団体の活動が、誰から見ても効率性が高く、明確な効果が見込める「解決策」を持っていることに確信がなければなりません。また、それをきちんと伝わるメッセージにする必要があります。また、メッセージを伝える人の能力を育てることも必要でしょう。
 しかし、確かに、寄付の伝統のあるアメリカ社会とはいえ、激しいNPO間の競争のあることを考えると、いかにして自分の団体の持つ「解決策」が優れているかをアピールしないことには、アメリカのNPOは生き残れないという厳しい環境にあることの表れなのかもしれません。

 ファンドレイジングの本質について考えさせられました。

前回は、コトラーの「組織中心の心理構造にある組織」というものの特徴を見て見ました。今回は、顧客中心の心理構造にある組織についてみて見ます。

顧客中心の心理構造にある組織

全てのマーケティングに関する計画、調査の視点が顧客に始まって顧客に終わっているか(顧客中心主義となっているか)

顧客調査に非常に重きを置いているか。(顧客が何を求めているかを勝手に想像していないか)

顧客の特性やニーズにより、分類化・細分化を積極的に行っているか
(例えば「寄付者」とひとくくりにせず、更なる細分化をしているか)

競合相手を幅広く捉えて分析しているか。(自分の組織の視点ではなく、顧客の視点で見て、競合相手との違いを分析しているか)

マーケティング・ミックス(サービス・製品政策、価格政策、広告宣伝戦略、チャネル(サービスや情報の伝達経路)戦略)を最大限活用してマーケティング戦略を考えているか
 (広報手段のみを変更するのではなく、時には、顧客のニーズに併せてサービスの内容や価格、サービスの伝達経路を変更することも重要。)


 皆さんの組織ではいかがでしょうか。
 私の場合、自分の経験から、「顧客のニーズを勝手に想像してたなあ。」とか、「ああ、自分の組織を中心に競争相手のことを考えていたなあ。顧客の視点とはなあ。」とか、うなずかされることが多くありました。

 もちろん、経営資源(資金や人材)には、限りがありますから、何でもかんでも顧客調査や競合相手調査をしたりするのは、特に中小NPOには難しいことですが、このコトラーの「顧客中心思想」は、むしろ常日頃の仕事の中で生きてくるような気がします。

 私の理解では、コトラーのマーケティング理論の中で、NPOマネジメントの観点から、最も参考になるのは、この「顧客中心・組織中心の心理構造にある組織」の理解だと思います。





今日は、NPOマネジメントの各論というか、理論面についてちょっと考えて見ます。まず、最初はマーケティングを取り上げます。NPOがマーケティングというとピンとこないかもしれませんが、企業経営に際してのマーケティングコンセプトの定義が、「企業経営にあたって必要とされる企業の市場に対する考え方もしくは接近法」となっていますので、NPOにとてっては、「NPO経営にあたって必要とされるNPOの社会に対する考え方もしくは接近法」ということにでもなるでしょうか。私の学んだNPOのマーケティングの領域では、市場の細分化や、顧客ニーズの把握、マーケティングプロダクトミックス(価格戦略やチャネル戦略)というものへの理解を踏まえてマーケティング戦略を立案する方策について学びました。
  
  その中でも、特にNPOに参考になる考え方があったのでご紹介します。経営学の世界では有名なコトラー博士が書いたStrategic Marketing for Nonprofit Organizationsに「組織中心の心理構造にある組織(Organization-centered mindset organizations)」と「顧客中心の心理構造にある組織(Customer-centered mindset organizations)」に関する興味深い分析です。

 なお、ここでいう「顧客」とはNPOのサービスの受益者、寄付者、支援者等を指していると考えてください。


組織中心の心理構造にある組織
  彼によれば、組織中心の組織とは、

,修料反イ提供するサービスが、本来的に(inherently)望ましいものと見ている.

組織の成功がおぼつかないのは、顧客がわれわれのことを無視しているか、顧客のモチベーションが足りないか、その両方だと考えている。

顧客の分析に重きを置いていない。

マーケティングのことを広告宣伝活動だと考えている。

マーケティングの専門家とは、団体の行うサービスに詳しい人間か、コミュニケーションスキルに秀でた人間から選でおけばよいと考えている。

ひとつのベストと考えるマーケティング戦略を他のマーケット(違う正解を有したグループ)にも活用している。

競合相手のことは無視されがちである。

 如何でしょうか。「こんなひどい組織は、ウチとは関係ないな。」と思いました?それとも、「え、これのどこが悪いの?」と思いましたか。私は、かつて、日本である国際協力NGOの理事を努めさせていただいていました。また、今でも、日本の独立行政法人で働いていますが、自分の関わった組織の状況に当てはめると、自分の組織が、如何に「組織中心的」に運営されていたかを感じずにはおれません。では、コトラーの提唱する「顧客中心組織」とはどのようなものでしょうか。

企業であろうと、NPOであろうと、収入源を確保することは、あたりまえですが、重要なことです。しかし、そのメカニズムには大きな違いがあります。

企業とNPOの財務メカニズムの違い

  企業であれば、単純化して言えば、出資をうけるとか、銀行からお金を借りるなりして資金を調達して、その資金で機械を買い、原材料を買って、加工製品を作ります。その加工製品を売って利潤が上がればその分で金利負担を含めた借入金を返済することができます。そこで第一に問題となるのは、投資に見合った収益が見込めるかどうかという点です。基本的には、その財・サービスを購入した人がその企業に収益(資金)をもたらします。そして、企業は、その資金(収入)から、出資者や銀行に借入金や配当というかたちで資金を還流させていきます。

  他方で、普通のNPOにとって、このメカニズムは若干異なっています。まず、最初に事業を行うための財源(企業の場合は資本・借入金)があるのは同じです。ただし、NPOは財源を借入れよりは、多くは寄付・助成収入で求めていくという傾向があります。次に、スタッフを雇って、プログラムをつくって、必要ならスタッフを訓練して、サービスを提供します。しかし、ここでの最大の違いは、サービスを購入する最終ユーザーが、非常に廉価で、時には無料で、そのサービスを受けることがある点です。NPOは、損益分岐点を計算して価格を設定するというよりは、むしろ、最終ユーザー(受益者)が支払い可能な価格を設定することの方が多いのです。それが、時には無料のサービス提供という形となります(ここでは、収益事業のことは外して考えます。)

 例えば国際協力NGOであれば、寄付を受けて、スタッフがプログラムを作成して、途上国の貧困者の生計向上に役立てるというようになります。途上国の貧困者からお金を取るわけにはいきませんので、プログラムをやればやるほど団体の資産は目減りします。つまり、構図としては、団体のサービスを受ける人と、団体への資金を提供する人(寄付者)が、全く別の人ということになります。この点が企業の資金サイクルと大きく違います。

  NPOの資金サイクルで最も難しいのは、サービスの直接受益者でない人から、(返済や配当を伴わない)資金提供を受けなければならない点にあります。これを効果的に行おうというのがファンドレイジングの基本的な考え方です。

大学以外でのNPOマネジメント教育
 
 アメリカは、大学院レベルでのNPOマネジメント教育が盛んな一方で、Conferenceを活用した訓練機会の提供にも大変熱心です。例えば、AFP(Association of Fundraising Professionals)は、ファンドレイジングの専門家のための会員組織ですが、この年次総会では実に150を超えるTeaching Sessionが用意されており、参加者は、好きなセッションに参加して、ベテランのファンドレイザーが紹介する最新のファンドレイジングテクニックを共有することができます。こうした年次総会を利用した会員のスキルアップは、ほぼ全ての同種のNPO組織・職員向けアンブレラ団体のConferenceに共通しており、私もいくつか出席した印象では、短時間で集中的にノウハウを教えてくれるので、大変効率的にスキルアップが図れるという印象です。ただし、これらのアンブレラ団体は、特定テーマ(ファンドレイジングとか、ボランティアマネジメントとか)に特化して存在していますので、もちろん、Conferenceでは、そのテーマだけを取り上げます。つまり、包括的に「NPOマネジメント」という切り口で何かを教えてくれるわけではありません。

 この他にも、各種財団、政府機関、NPO、コンサルティング会社が提供する各種短期集中型研修も数多くあります。有名なところでは、Foundation Center(全米6ヶ所にある、財団関連情報をまとめてNPOに提供する機関)が提供するNPOマネジメントトレーニングがあり、概ね数時間の研修で、大半は無料で受けられます。これらは、インターネットを使ったファンドレイジングとか、プロポーザルの書き方とかいった、個別の技術論中心です。また、大学院が夏季集中講座等、1週間くらいの短期集中プログラムでNPOマネジメントのトピックを集中的に教えるプログラムも盛んです。理事会運営とか、ボランティア管理とかをとりあげています。コンサルタントの研修プログラムには、3日で1人4000ドルとかいうのもあり、かなり包括的なマネジメント強化プログラムになっています。一体誰が払えるのかと思いますが、結構にぎわっているものもあるようです。


 やはり、外国人がNPOマネジメント全体を包括的に勉強するには、大学院でのプログラムが一番適当なようです。他方で、短期集中型、即戦力型の訓練機会として、ConferenceやNPO主宰のワークショップ等は、貴重な機会で、一時期、私もかなり「はしご」してみました。

NPOマネジメント学とは、NPOのO「Organization」の部分に着目した領域であるといえます。NPOセクターそのものを取り上げて政策科学として論じることや、社会福祉事業との関連でボランティア論を論じるものも多くありますが、NPOマネジメント学は、基本的には、NPOという組織形態そのものの持つ特殊性を踏まえたOrganization Managementを分析するものです。では、NPOマネジメント学とはどのような体系のものなのでしょうか。それを考える前に、まず、NPOマネジメントをアメリカではどのように教えているかを見て見ましょう。

大学院レベルでのNPOマネジメント教育

 アメリカでは、大学院レベルでのNPOマネジメント教育に20年弱の歴史を有しています。1980年代にニューヨークのニュースクール大学、サンフランシスコ大学等が大学院レベルでのNPOマネジメント教育をはじめ、私のいるケースウエスタンリザーブ大学でも、Mandel Center for Nonprofit Organizations が設立されました。今では、200以上の大学院で何等かの形でNPOマネジメントを取り上げて教えていると言われています。こうした大学院のウエブサイトを見ていくと、あちこちの大学で、「ウチが一番最初にNPOマネジメント教育を始めた」というようなフレーズが出てきます。一体どこが本家本元なのかはおいておくとしても、それだけ、新しい学問領域であるともいえるでしょう(どのアメリカの大学も、「ウチが一番に経済学を教え始めた!」とは言いませんものね。)

 アメリカの大学院レベルでのNPOマネジメントについては、大きく分けて、3通りのカリキュラム設定がされていると言えるでしょう。仝共管理学(Public Administration)や政策科学(Political Science)の一環として、NPO関連のコースを3〜7コース用意しているもの。MBAの一環として、NPOマネジメントのコースを3〜7コース用意しているもの。NPOマネジメントに特化した修士課程(非営利組織修士、非営利マネジメント修士等)を設置し、20コース前後のNPOマネジメントコースを用意しているもの。上記の ↓△砲いては、理事会運営や、ファンドレイジング、市民社会の役割といった、政府や企業と違うNPOならではの役割を念頭において、コース設定がなされています。他方で、のNPO修士課程型では、どっぷりNPOマネジメントに浸かって朝から晩までNPOマネジメントについて考えるという感じのコース設定となります。




 


 みなさん、はじめまして。

 私には、夢があります。
 今、日本の寄付市場は、個人と法人の寄付をあわせてだいたい年間1兆円です。
 これを2020年に10兆円の時代を実現したい。そう思っています。

 それは簡単なチャレンジではないと思います。

 でも、今の日本社会は、明治維新以降形作ってきた、さまざまな形を、生まれ変わらさないといけないタイミングにきています。そうしたないと、財政赤字も、少子高齢化も、社会の不安感も、解消しない。新しい社会モデルを創る必要がでてきています。

 その最も本質的な要素が、「民から民への資金の流れをつくる」 つまり、税金以外に、社会の公共を支える資金の流れを作り出すことがと思っています。

 いわば、「血の流れを変える」ことこそ、今必要なことなのだと思います。

 私は、2008年に株式会社ファンドレックスという、ファンドレイジング専門のコンサルティング会社を創業しました。ファンドレックスでは、「ひとつひとつのNPOに寄り添って、具体的な解決策を創りだす」ことにこだわり、ファンドレイジング戦略設計、寄付者データベース(SalesforceやMicrosoft Dynamics導入)、共感CM作成支援など、これまで100団体を超えるNPOや公益法人に対して、支援を行ってきました。

 また、2009年に特定非営利活動法人日本ファンドレイジング協会の発足に携わり、常務理事・事務局長に就任しました。日本ファンドレジング協会は、全国47都道府県から集まった580人の発起人のみなさんとともに立ち上がり、寄付白書の発行、認定ファンドレイザー資格制度の運営、子供の寄付の教室の展開、ファンドレイジング日本という全国大会の開催など、日本のファンドレイジングを底上げする取組を行ってきました。


 このブログは、2005年12月、毎日、ファンドレイジングについて考えて考えて、独り言が出始めたころに、奥さんに諭されて、「今考えていることを書いてみよう」と思って書き始めました。一時期は、200日とか連続で書いていたりもしました。創業する前にも、このブログのおかげで知り合ったり、相談に乗ったりする中で、たくさんの素晴らしい方に出会えました。そういう意味では、私にとっては、原点ともいうべきブログです。

 今では、2008年8月からはじめた「ファンドレイジング道場〜黒帯の道」(毎週月曜日配信のメルマガ)のほうに力がはいって、ブログの更新頻度は昔ほどではありませんが、これからも、気づきや学びをコツコツと発信していこうと思っています。

          
                                                     
鵜尾雅隆(うお まさたか)

このページのトップヘ